【論文紹介】
「聴覚失認を呈した一症例の
コミュニケーション改善に向けた
視覚性注意機能訓練と視覚的代償
訓練の効果」
作業療法39巻pp495‐502,2020
清水賢二,酒井 浩,高橋守正,他
当初,語聾と考えられたケース。
他の認知機能の低下もあり,広義的に
聴覚失認という範疇で取り扱いました。
注意機能,特に視覚性注意機能の改善,
推測的・文脈的な理解が可能となること
によって,言語の聞き取り能力はアップ
したが,閉眼状態や電話での聞き取り能力
はあまり変化しなかったことから,
口の動きや非言語的な入力情報,あるいは
文脈などの情報をもとに言語の
聞き取り能力がアップしたものと考え,
特に視覚に関する注意訓練や代償的な情報
処理能力・推論能力の改善訓練が
効を奏したのではないかと考えられました。
語聾や聴覚失認の報告,特に介入変化
に関する報告は少なく,本例のように
根本的な改善は難しい印象であるが,
それでも,注意機能や非言語的情報の処理
と思考類推の機能が改善することによって
コミュニケーション能力はアップすること
が期待できる。
そう感じられた経験でした。