2020年10月22日木曜日

論文紹介②

 

   
















 



【論文紹介】
「左右の異なる手に他人の手徴候を呈した
      2症例に対するリハビリテーションの経験」
   
    認知リハビリテーション2019 p51~
     根岸沙樹,清水賢二,高橋守正,酒井 浩,他

 左手に呈した他人の手徴候事例は,左手が視野外にある
場合,触刺激等で容易に意志に反する無意味的な動きをする
特徴があり,非利き手ということもあって,不使用傾向が
長引いた。右手の他人の手徴候事例は,道具の強迫的使用
症状が前景に出ており,急性期では不使用であったが,
その後は脱抑制的に目前の対象物を勝手に操作するという
特徴が見られた。また,前者は非利き手であり,主たる
使用手ではないからか,動きに気づきにくく,左右手間の
抗争は頻繁ではなく,後者では,主動作手であるためか,
左右手間の抗争が顕著となるようであった。

 他人の手徴候は,左右のどちらに出現するのか,半側無
視や自発性低下,注意障害など,合併する症候によって表
現型が異なるものと考えられた。

 今回担当した事例の場合,前者では左手を視野内に入れ
て,勝手に動くことを自ら気づき,それを回避または抑制
するという習慣をつけることが重要であり,後者の場合に
は,右手の使用を抑制し,同時併行で注意分配力を高める
ことから訓練を始め,段階的に意志にそった動きが可能と
なるように進めるべきではないかと考えられた。加えて,
道具の強迫的使用例では「道具を使えている」と判断しが
ちであるが,実は本人が思うように手を操作できていない
こともあるため,自己意志にそって開始停止ができるか,
ペースや文脈に沿った操作が可能であるかなど,
クオリティの側面にも着目すべきではないかと感じられた。

 (文責 酒井 浩)